必要な画角と映像の細かさは、どう決める?
必要な映像の細かさは「何MPのカメラか」からは決まりません。決まるのは逆方向です。対象がいる位置で横方向に何メートルを映す必要があるか(撮影範囲)と、その対象をどこまで細かく見たいか(必要な画素密度、px/m)を先に決め、その 2 つを掛け合わせて、必要な水平画素数を求めます。画素密度は「水平画素数 ÷ 撮影範囲の幅」なので、同じカメラでも映す範囲を広げれば、そのぶん細かさは下がります。
このページはメーカー中立の計算方法の説明です。掲載している参照値は、公開されている技術資料に基づく設計上の目安であり、テクリアスによる保証ではありません。数値を満たすことと、目的を達成できることは別です。
1. 中心にある 1 つの関係式
このページの計算は、すべて次の 1 本の式から導かれます。
画素密度(px/m) = 水平方向の記録画素数(px) ÷ 横方向にカバーする幅(m)
この式の 3 つの項のうち、2 つが決まれば残りの 1 つが決まります。実務では、次の 3 通りの使い方をします。
| 状況 | 入力する値 | 求まる値 |
|---|---|---|
| 機器と設置条件がほぼ決まっている | 水平画素数、撮影範囲の幅 | 到達する画素密度(px/m) |
| 必要な細かさと範囲が決まっている | 撮影範囲の幅、必要な画素密度 | 必要な水平画素数(px) |
| 手持ちの機器で、どこまで広げられるかを見たい | 水平画素数、必要な画素密度 | 数値上の最大の撮影範囲(m) |
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2. 同じ画素数でも、広げれば細かさは落ちる
この関係が、カメラ設計で最も見落とされやすい部分です。まず数字で確認します。
水平 1920 px で記録する映像を、横方向に 10 m の範囲へ割り当てると 192 px/m になります。同じ 1920 px を 20 m へ広げると 96 px/m です。範囲を 2 倍にすると、画素密度は半分になります。
逆に、同じ 10 m の範囲でも、水平画素数が 1920 px なら 192 px/m、3840 px なら 384 px/m です。画素数を 2 倍にすると、画素密度も 2 倍になります。
3. 撮影範囲と画素密度の関係
帯の長さはどれも同じで、記録される映像の水平画素を表しています。同じ帯を何メートル分に割り当てるかで、1 メートルあたりに使える画素が変わります。
例1: 水平 1920 px を 5 m に割り当てる
帯全体が水平 1,920 px の記録画素、区切り 1 つが 1 m(全 5 m)。1 m あたり 384 px/m。
例2: 水平 1920 px を 10 m に割り当てる
帯全体が水平 1,920 px の記録画素、区切り 1 つが 1 m(全 10 m)。1 m あたり 192 px/m。
例3: 水平 1920 px を 20 m に割り当てる
帯全体が水平 1,920 px の記録画素、区切り 1 つが 1 m(全 20 m)。1 m あたり 96 px/m。
例4: 水平 3840 px を 20 m に割り当てる
帯全体が水平 3,840 px の記録画素、区切り 1 つが 1 m(全 20 m)。1 m あたり 192 px/m。
これは算術の例であり、実際の映像の見え方を示すものではありません。例3 と例4 を比べると、範囲を広げたぶんを画素数で戻すと同じ px/m に戻ることが分かります。なお、ここで扱っているのは画素の割り当てだけです。必要な帯域は、経路に同時に流れる映像ストリームのビットレートを合計して確認します。保存容量は、録画に使う平均ビットレートと録画時間から計算します。いずれもこの計算とは別のものとして扱ってください。
4. 画角・ピクセル密度 一次計画ツール
入力された前提だけで計算します。既定値は持っていません。カメラの機種を推薦する機能はなく、参照値を選んだ場合も返すのは数値の大小比較だけです。入力内容はこのブラウザの中だけで処理され、送信も保存もされません。撮影範囲の求め方と参照値の詳しい扱いは、このツールの下で説明しています。
実際に記録される映像の横方向の画素数です。例: 1920、2560、3840。カタログ上の総画素数ではなく、録画設定で使う解像度の横方向の値を入力してください。
対象がいる位置で、映像の左端から右端までが実際に何メートルにあたるかです。下の幾何ヘルパーでも概算できます。
入力すると、その幅に何画素が当たるかを掛け算で表示します。未入力なら px/m だけを表示します。
参照値と比べる(任意)
自分で数値を入力するか、公開されている技術資料の参照値を選びます。参照値を選んだ場合も、このツールが返すのは数値の大小比較だけです。運用上の可否を判定するものではありません。
2014年版と2025年版は、用語も段階の数も異なる別々の体系です。混ぜて使わないでください。
社内の基準値や、発注元から示された条件がある場合はその値を入力します。
入力値ベースの計算結果
入力された前提だけを使った算術です。機種の推奨は行いません。
参考: 画角から幅を概算する(任意)
対象面がカメラに正対していると仮定した、理想化した幾何です。幅 = 2 × 距離 × tan(水平画角 ÷ 2) で計算します。レンズの歪み、実際の切り出し範囲、設置角度による投影の変化は含まれていません。実機での確認を置き換えるものではありません。
0 より大きく 180 未満で入力します。機器仕様に記載された水平画角の値を使います。
5. 撮影範囲の幅をどう求めるか
画素密度の計算には、対象がいる位置での横方向の幅(m)が必要です。この値の求め方は 2 通りあります。
- 現地で測る: 対象がいる位置で、映像の左端から右端までが実際に何メートルにあたるかを測ります。既設カメラがある場合や、設置予定位置が確定している場合はこの方法が確実です。
- 画角と距離から計算する: 機器仕様の水平画角と、カメラから対象面までの距離から、理想化した幾何として求めます。
2 番目の計算は次の式です。撮影範囲の幅(m) = 2 × 距離(m) × tan(水平画角 ÷ 2)。距離 10 m、水平画角 90 度であれば、幅は 20 m になります。
センサーサイズから焦点距離を逆算しない理由
焦点距離とセンサーフォーマットから画角を求める式は存在しますが、センサーフォーマットの表記(1/2.8型など)は実際の撮像面の寸法と一定の関係にありません。また、記録時に撮像面の一部だけを使う機種もあります。前提が揃わないまま計算すると、見かけ上の精度に対して誤差が大きくなります。
このページの計算ツールでは、焦点距離からの逆算は扱っていません。機器仕様に記載されている水平画角の値を使ってください。多くの機器仕様では、レンズの焦点距離の範囲とあわせて水平画角の範囲が記載されています。
6. 参照値には版が 2 つある
必要な画素密度を決めるとき、公開されている技術資料の参照値を出発点にすることがあります。ここで、版の違いに注意が必要です。
映像監視システムの運用要件については、IEC 62676-4 という国際規格が用いられます。この規格には 2014年版と 2025年版があり、運用要件の区分の仕方と用語が異なります。当サイトが参照しているのは、規格そのものではなく、機器メーカーである Axis Communications がこの規格の内容を解説して公開している技術資料です。
2014年版に基づくとして示されている参照値は 4 段階で、その頭文字から DORI と略されることがあります。2025年版に基づくとして示されている参照値は 7 段階で、用語も異なります。DORI は 2025年版の用語ではありません。
| 運用要件(2014年版の用語) | 参照値 |
|---|---|
| Detection(検知) | 25 px/m |
| Observation(観察) | 63 px/m |
| Recognition(認識) | 125 px/m |
| Identification(識別) | 250 px/m |
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| 運用要件(2025年版の用語) | 参照値 |
|---|---|
| Overview(全体把握) | 20 px/m |
| Outline(輪郭検出) | 40 px/m |
| Discern(対象識別) | 80 px/m |
| Perceive(動態認識) | 125 px/m |
| Characterize(特徴判別) | 250 px/m |
| Validate(検証) | 500 px/m |
| Scrutinize(詳細精査) | 1500 px/m |
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2 つの版を混ぜて使ってはいけない理由
2 つの版には、同じ px/m の値を持つ段階がありますが、用語が異なります。たとえば 125 px/m は、2014年版では Recognition(認識)、2025年版では Perceive(動態認識)に対応する値として示されています。数値だけを取り出して、別の版の用語と組み合わせると、意味が変わってしまいます。
社内の基準や発注元の要件で「◯◯レベル」といった表現が使われている場合は、それがどちらの版に基づく用語なのかを確認してください。用語だけが一致していても、参照している版が違えば、前提が違います。
7. 参照値を満たしても、結果は保証されない
参照値は設計の出発点であり、達成の証明ではありません。出典自体がこの点を明示しています。
- 参照値は、人が映像を見て判断する場合を前提にしています。ソフトウェアによる映像解析では、必要な条件の考え方が異なります。
- 熱画像カメラでは、運用要件の考え方が異なります。同じ数値をそのまま当てはめられません。
- 光の向き、光学系の品質、圧縮の設定によって、同じ px/m でも得られる情報量が変わります。
- 確認に使う画面の解像度によって、実際に見て取れる情報が変わります。数値上は十分でも、確認環境が追いつかないことがあります。
- 被写体が動いている場合、シャッターと照明の条件によってはぶれが生じ、静止画としての情報が失われます。
- 設置角度によって、対象の見え方が変わります。真上から見る構図では、画素密度が十分でも顔は写りません。
- 参照値は幅(px/m)で表される値であり、対象の縦方向や、対象が斜めを向いている場合の見え方を直接表すものではありません。
また、これらの数値は改定されることがあります。設計や調達の根拠に使う場合は、出典の最新版を確認してください。
8. 「必要な水平画素数」は「必要なカメラの画素数」ではない
計算で出るのは水平方向の画素数です。そこから機器の仕様へ移すには、もう一段の確認が必要です。
たとえば「水平 2500 px 必要」と出たとき、それを満たす機器を選ぶには、次の点を機器仕様で確認する必要があります。
- その解像度で記録できるか: 最大解像度で記録できても、フレームレートや機能の組み合わせによって選べる解像度が制限されることがあります。
- アスペクト比: 16:9 と 4:3 では、同じ総画素数でも水平方向の画素数が変わります。
- 実効的な記録範囲: 一部の機種では、特定の機能を有効にすると記録範囲が狭くなることがあります。
- 切り出しの有無: 映像の一部を切り出して使う運用では、切り出し後の画素数で計算し直す必要があります。
- レンズ: 必要な画角の範囲を、そのカメラのレンズで得られるか。
- 録画側の条件: 必要な帯域は、その経路に同時に流れるストリームのビットレートを合計して確認します。保存容量は、録画に使う平均ビットレートと録画時間から計算します。いずれもこの px/m の計算とは別です。同等の画質を保とうとする場合、解像度やフレームレートを上げると必要なビットレートが上がることがありますが、ビットレートを固定すれば保存容量はその設定に従います。
9. 使い方の例
実際の検討では、次のように往復しながら値を詰めていきます。以下はあくまで計算の流れを示す例で、推奨する数値ではありません。
- 確認したい地点を 1 つ選ぶ(例: 通用口を入ってすぐの通路)。
- その地点で何を確認したいかを決める(例: 出入りする人物を後から特定したい)。
- 必要な画素密度を決める。社内基準がある場合はその値、なければ参照値を出発点にし、どの版のどの段階を使ったかを記録する。
- 対象がいる位置での撮影範囲の幅を決める(例: 通路の幅と、両脇の余裕を含めて何 m か)。
- モードB で、必要な水平画素数を計算する。
- その画素数を記録できる候補機器があるかを確認する。なければ、撮影範囲を狭める(カメラを増やす、設置位置を近づける)か、必要な画素密度の前提を見直す。
- 候補が決まったら、モードA でその機器の記録解像度と撮影範囲から、到達する画素密度を計算し直す。
- 照明条件、設置角度、動きの条件、圧縮設定を確認し、実機または貸出機で見え方を確認する。
この手順を、確認したい地点ごとに繰り返します。地点ごとに必要な画素密度が違うため、1 種類のカメラですべてを満たそうとするより、地点ごとに条件を出したほうが結果的に構成が整理されます。
次に進める先
数値が出たら、機器の条件と録画側の条件を確認します。