ネットワークカメラのセキュリティは、何を確認する?

ネットワークカメラのセキュリティは、初期パスワードを変えたか、VLAN で分けたか、といった単一の対策では評価できません。製品そのものが備えているセキュリティ機能、導入時の初期設定、ネットワーク上のどこに置くか、外部からどう接続するか、更新とサポートがいつまで提供されるか、日々の運用で誰が何を確認するか、そして機器を入れ替え・廃棄するときに何を消すか。この 7 つを、それぞれ別の確認項目として見ます。

このページはメーカー中立の確認手順の整理です。特定の製品の推奨や、特定製品のラベル取得状況の主張は行いません。制度・ガイドラインの記述は、公開されている一次情報の範囲にとどめています。

1. 単一の対策では評価できない

ネットワークカメラのセキュリティの相談は、「パスワードは変えました」「カメラは VLAN で分けています」から始まることが多くあります。どちらも意味のある対策ですが、それだけでは評価が終わりません。

この 2 つは、それぞれ別の目的を持つ「達成したいこと」です。1 つは認証情報の管理、つまり既知の初期認証情報や共有された認証情報が使われる状態をなくすこと。もう 1 つはネットワークの区画化とアクセス制御、つまり侵入された場合に他の系統へ広がる範囲を限定することです。VLAN はその一般的な実装のひとつで、ほかに物理的な分離、ルーティングによる分割、ファイアウォールでのゾーニングといった実装もあります。どの実装を採るかは、既存の構成と運用体制によって決まります。

そして、どちらを満たしていても、機器そのものに未修正の脆弱性が残っている場合や、サポートが終了して更新が提供されなくなった場合には、それ自体では対処できません。

そのため、このページでは次の 7 つを別々の確認項目として扱います。

  1. 製品そのもののセキュリティ機能(調達前に仕様で確認する)
  2. 導入時の初期設定(設置作業の中で確実に行う)
  3. ネットワーク上のどこに置くか(設計として決める)
  4. 外部からの接続方式(設計として決める)
  5. 更新とサポートの提供期間(調達前に確認し、期限を管理する)
  6. 運用時の確認(誰が、いつ、何を見るか)
  7. 入れ替え・廃棄時の処理(手順として決めておく)
VLAN で分離すること自体が、カメラを安全にするわけではありません。分離は、他の系統への影響を限定するための構成上の措置です。分離した区画の中でカメラが侵害されれば、映像そのものは影響を受けます。同様に、クラウドを使うこと自体もセキュリティ対策にはなりません。誰がどの経路でアクセスできるかが、構成として決まっているかどうかが問題です。

2. なぜネットワークカメラが対象になるのか

長時間・無人で稼働する構成が多く、ネットワークに接続され、管理の手が届きにくい場所に設置されることがあるためです。

総務省・NICT などが実施する NOTICE の公開情報では、ルーターやネットワークカメラのようにインターネットに接続される機器が、サイバー攻撃の対象になりうることが説明されています。想定される被害として、映像を第三者に見られること、機器が乗っ取られて他への攻撃に使われることが挙げられています。

同じ公開情報では、対策として、推測されにくいパスワードの設定、ファームウェアの更新、使っていない機能(SSH や Telnet などの接続)の無効化、サポートが終了した機器の入れ替えが挙げられています。

これらは一般的な注意喚起であり、個別の製品がどの機能を備えているか、どの設定が可能かは機種によって異なります。ここに挙げた対策のすべてが、すべての製品で実施できるとは限りません。対応の可否は機器仕様で確認してください。

3. JC-STAR とは何か(制度の位置づけ)

調達の場面で「JC-STAR」という言葉が出ることが増えています。まず、制度が何であって、何ではないかを整理します。

JC-STAR は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が運用する「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度」です。IoT 製品が定められたセキュリティ要件に適合しているかを評価し、適合した製品にラベルを付与することで、調達する側が製品のセキュリティに関する情報を確認できるようにすることを目的としています。

制度は任意参加です。ラベルを取得するかどうかはメーカーの判断であり、ラベルのない製品が制度に違反しているわけではありません。また、企業がラベル付き製品を使うことを一般的に義務づける制度でもありません。

JC-STAR のラベル水準と、評価の方式
水準要件の範囲評価の方式
★1IoT 製品に共通する最低限のセキュリティ要件メーカーによる自己適合宣言
★2★1 に加えて、製品分野ごとの要件メーカーによる自己適合宣言
★3 / ★4製品分野ごとの、より高い水準の要件。政府機関等や重要インフラ事業者等での利用を想定した水準として位置づけられています独立した第三者評価機関による評価報告書に基づき、IPA が認証・適合ラベルを付与

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★3 と ★4 は、制度上どちらも第三者評価による水準として説明されています。ただし、公開されている内容の状況は水準ごとに異なります。当サイトの確認日(2026-08-14)時点で、★4 の具体的な適合基準・評価手法、評価ガイド、チェックリストは、IPA のページ上で「準備中」と示されています。★4 の要件の詳細が確定・公開されているものとして調達条件を組み立てないでください。公開時期についても、当サイトでは予測しません。

ネットワークカメラについては、★3(レベル3)の分野別の要件が公開されています。IPA の公開情報によると、ネットワークカメラの ★3 セキュリティ要件は 2026年2月6日に公開され、2026年6月12日に「ネットワークカメラ★3適合要件」が公開されるとともに、セキュリティ要件が更新されています。これらは制度側の要件が公開されたという事実であり、特定のメーカーや機種がこの水準に適合していることを意味するものではありません。

★の数は、その製品が満たしている要件の範囲と評価の方式を示すものです。「★が高ければ、あらゆる用途において安全」という意味ではありません。自社の用途で必要な条件は、制度の水準とは別に定義する必要があります。

4. JC-STAR について言えないこと

制度の説明が独り歩きしやすい部分です。次の言い方は、いずれも制度の内容と一致しません。

よくある 6 つの誤解と、公開情報から言えること
よくある誤解と、公開情報から言えること
見かける説明(いずれも誤り)制度の公開情報から言えること
「すべての企業に、ラベル付き製品を使う義務がある」制度は任意参加です。一般的な使用義務を定めるものではありません。特定の調達で条件として指定される場合は、その調達の要件として確認します。
「ラベルがあれば安全である」ラベルは、定められた要件に適合していることを示すものです。運用、設置場所、ネットワーク構成、更新の実施状況によって、実際の安全性は変わります。
「★が高ければ、どんな用途でも安全である」★の水準は、要件の範囲と評価方式の違いを示します。自社の用途に必要な条件は別に定義する必要があります。
「JC-STAR は技適と同じもの」技術基準適合証明(技適)は、電波法に基づく無線設備の制度です。JC-STAR は IoT 製品のセキュリティ要件に関する制度で、根拠も対象も異なります。
「JC-STAR は RBSS と同じもの」RBSS は防犯設備の性能に関する別の枠組みです。次の項で扱います。
「JC-STAR は NDAA と同じもの」調達要件として引用される NDAA は、米国の FY2019 NDAA Section 889 を実施する FAR(連邦調達規則)上の要件・制約を指すのが一般的です。米国連邦調達の文脈における規則であり、日本のサイバーセキュリティ認証ではありません。

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特定の製品がラベルを取得しているかどうかは、IPA が公開している適合ラベル取得製品の一覧で確認できます。この一覧には、登録番号、事業者名、製品名、水準、状態(有効・期限切れ・取下げなど)、取得日、有効期限が掲載されています。状態が「有効」でない記録も含まれるため、確認するときは状態と有効期限まで見てください。

販売資料やメーカーの説明だけを根拠に、ラベルの取得状況を判断しないでください。当サイトも、特定の製品のラベル取得状況については記載しません。確認は IPA の公開記録で行ってください。

5. RBSS は別の枠組み

防犯カメラの調達では、RBSS という表記を見かけることがあります。JC-STAR とは目的も対象も異なります。

RBSS は、公益社団法人日本防犯設備協会が運用している自主認定事業です。防犯機器に必要とされる機器と性能の基準を定め、その基準に適合した機器を認定することで、優良な防犯機器の普及を図ることを目的としています。対象には防犯カメラのほか、録画装置や防犯灯が含まれます。

JC-STAR と RBSS の運用主体・対象・確認できることの比較
JC-STAR と RBSS の違い
項目JC-STARRBSS
運用IPA(独立行政法人情報処理推進機構)公益社団法人日本防犯設備協会
主な対象IoT 製品のセキュリティ要件への適合防犯機器としての機器・性能の基準への適合
確認できること定められたセキュリティ要件を満たしているか防犯設備として定められた機器・性能の基準を満たしているか

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この 2 つは、一方が他方を置き換えるものではありません。どちらか一方の記載があることをもって、もう一方の内容を推定することはできません。また、すべてのカメラに RBSS の認定が必要というわけでもありません。調達要件として指定されている場合に、その内容を確認してください。

日本防犯設備協会は認定機器の一覧を公開しています。ただし、そこに掲載されている情報から JC-STAR の取得状況を判断する場合は、IPA の公開記録で改めて確認してください。

6. IPA のネットワークカメラ向けチェックリスト

確認観点を体系的に整理した公的な資料として、IPA が公開しているチェックリストがあります。

IPA は「ネットワークカメラシステムにおける情報セキュリティ対策要件に関するチェックリスト」を公開しています。調達する側が、ネットワークカメラシステムを構成する機器の機能を踏まえて情報セキュリティを確保できるようにすることを目的とした資料で、設計構築時・運用時・保守時・廃棄時という段階に分けて要件が整理されています。

IPA の説明では、政府機関の調達だけでなく、自治体や民間組織の調達においても参照できるとされています。ビルや施設(工場、倉庫)、河川監視などの監視カメラシステムが想定対象として挙げられています。

このチェックリストは、設計・調達・運用時の確認観点として参考になる資料です。掲載されている項目のすべてが、あらゆる組織に対する法令上の義務を示しているわけではありません。自社の規模、用途、既存の規程に照らして、どこまで適用するかを判断してください。

以下のチェックリストは、この資料と NOTICE の公開情報を参考に、当サイトが調達から廃棄までの流れとして整理し直したものです。原典の項目をそのまま転載したものではありません。実際の調達で使う場合は、原典もあわせて確認してください。

7. 調達前に確認する

導入後には変えられない条件が多く含まれます。この段階での確認が、後の運用の負担を左右します。

調達前の確認項目
確認項目確認する内容
サポート期間その機種のセキュリティ更新が、いつまで提供されるか。導入時点で残り期間が短ければ、運用期間中に入れ替えが必要になります。
更新の提供方法ファームウェアがどこで公開されるか。適用に必要な作業と、適用中に映像が止まる時間。自動更新に対応しているか。
脆弱性情報の公開発見された問題がどこで公開されるか。通知を受け取る手段があるか。
セキュリティ機能利用者ごとのアカウント作成、権限の分離、通信の暗号化、ログの出力、不要な機能の無効化に対応しているか。対応の範囲は機種によって異なります。
初期状態の扱い初期パスワードの設定方法。初回設定時に変更が必須になっているか、既定のアカウントが残るか。
外部との通信その製品が正常に動作するために、インターネット上のどのサービスと通信する必要があるか。通信しない構成で使えるか。
遠隔アクセスの方式メーカーが提供する遠隔接続の仕組みを使うのか、自社のネットワーク経由にするのか。それぞれ、どこに認証情報が保持されるか。
録画装置との組み合わせカメラと録画装置を別のメーカーで組み合わせる場合、対象の型番同士での確認結果があるか。
制度上の要件発注元や社内規程が特定の制度への適合を求めている場合、その内容と確認方法を文書で確認します。

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サポート期間は、機器の物理的な寿命とは別の概念です。映像は問題なく映っていても、更新が提供されない機器を使い続けることは、既知の問題が残ったままの状態になることを意味します。導入時に、入れ替えの時期を含めた計画にしておいてください。

8. 導入時に行う

設置作業の中で確実に行い、実施したことを記録に残す項目です。

  • 初期状態の認証情報の扱い: まず、その製品が出荷時にどの状態で届くかを確認します。共通の初期パスワードが設定されている、機器ごとに異なる初期認証情報が付属する、初回起動時にパスワードの作成を求められる、など製品によって異なります。共有された認証情報や既定の認証情報が残る場合は、メーカーが用意している手順でそれを解消します。
  • アカウントの割り当て: 運用に必要なアカウントを、用途と利用者に応じて作成します。全台で同じ認証情報を使うと、1 台が漏れたときに全台が影響を受けます。誰がどの認証情報を管理するかを記録に残します。
  • 不要なアカウントの整理: 既定のアカウントや、設置作業のために作ったアカウントが残っていないかを確認します。
  • ファームウェアの版の確認: 設置時点で提供されている版になっているかを確認し、版を記録します。
  • 不要な機能・サービスの停止: 使っていない接続手段や機能を、仕様上停止できる範囲で停止します。対応の可否は機種によって異なります。
  • ネットワーク上の配置: 設計で決めた区画に置きます。設置作業の都合で別の区画につながっていないかを確認します。
  • 時刻同期の設定: 複数の機器の記録を突き合わせるために必要です。時刻がずれていると、映像とログの照合ができません。
  • 通信の保護: 管理画面や映像の通信を暗号化できる場合は設定します。証明書を使う場合は、その管理方法も決めます。
  • 外部への通信の確認: その機器がインターネットへ出る必要があるか、出る場合はどこへ出るかを確認し、必要な範囲に限定します。
  • 設定の記録: 誰が、いつ、どの設定にしたかを残します。担当者が変わったときに必要になります。
「対応している場合」に限られる項目があります。暗号化や機能の停止に対応していない機種では、これらを設定できません。その場合は、機器側で対処できない部分をネットワーク構成や運用でどう補うかを決めてください。仕様で確認したうえで判断します。

9. 運用時に続ける

導入時に整えた状態を、時間の経過とともに維持するための項目です。担当者を決めないと実行されません。

運用時の確認項目
項目決めること
ファームウェアの更新誰が、どの頻度で提供状況を確認するか。適用の判断と作業を誰が行うか。適用中に映像が止まる時間を、どの時間帯に取るか。
アカウントの棚卸し誰がアクセスできる状態になっているかを定期的に確認します。退職・異動・委託先の契約終了に伴う削除手順を決めておきます。
ログの確認何を記録し、どれだけ残すか。誰がいつ確認するか。異常に気づける状態になっているか。
外部への露出の確認意図せずインターネットから到達できる状態になっていないかを、定期的に確認します。工事や機器の入れ替えをきっかけに構成が変わることがあります。
遠隔アクセスの見直し誰が、どの経路で、どの権限で接続できるか。一時的に許可した接続が残っていないか。
脆弱性情報の確認メーカーの公開情報や公的機関の注意喚起を、誰が確認するか。該当したときの対応手順。
設定のバックアップ機器の故障や入れ替えに備えて、設定を保存できる場合は保存します。保存先そのものの保護も必要です。
映像の閲覧・書き出しの記録誰がいつ映像を見た・持ち出したかを記録する必要があるか。必要な場合、その機能があるか。

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運用項目は、担当者を決めて初めて実行されます。「気づいた人が更新する」という状態では、実際には更新されません。誰が、どの頻度で、何を確認するかを決めて、記録に残してください。

10. 入れ替え・廃棄時に行う

最も忘れられやすい段階です。機器を外した後にも、情報が残ります。

入れ替え・廃棄時に行う 7 項目
  • 認証情報の削除: 機器に保存された認証情報を、仕様上可能な範囲で消去します。工場出荷状態への初期化に対応している場合は実施します。
  • 設定情報の削除: ネットワーク設定、接続先の情報、証明書などが残らないようにします。
  • 記録媒体の扱い: 機器内やレコーダー内の記録媒体に映像が残っていないかを確認します。媒体を再利用する場合と廃棄する場合で、必要な処理が変わります。
  • クラウド・サービス側の解除: 外部サービスに登録していた場合、機器の登録を解除します。機器を物理的に外しただけでは、サービス側の関連付けが残ることがあります。
  • アカウントの整理: その機器のためだけに作ったアカウントや、委託先へ発行したアカウントを削除します。
  • 譲渡・下取り時の確認: 機器を他者に渡す場合、上記の処理が完了していることを確認してから渡します。
  • 記録の更新: 資産管理の記録から外し、代替機の情報を登録します。
初期化や消去の機能があるかどうか、初期化で何が消えるかは機種によって異なります。仕様を確認したうえで、対応していない項目については別の手段(記録媒体の物理的な処分など)を検討してください。

11. ネットワーク上のどこに置くか

構成の話ですが、セキュリティの検討と切り離せません。ここでは、カメラ固有の判断材料だけを扱います。

  • カメラと録画装置の間の通信を、業務用の通信と同じ区画に流すか、分けるか。
  • 分ける場合、業務側からどこまでのアクセスを許すか(映像を見る端末はどこにあるか)。
  • カメラがインターネットへ出る必要があるか。出る必要がない場合、出られない構成にできるか。
  • 録画装置をインターネットから直接到達できる状態にしないこと。遠隔閲覧が必要な場合は、接続経路そのものを設計対象として扱います。
  • 保守業者が接続する必要がある場合、その経路と期間、権限をどう管理するか。
  • 複数の拠点にまたがる場合、拠点間の経路をどう扱うか。

VLAN やサブネットの分け方、DHCP やファイアウォール・ACL がそれぞれ何を担うのかといった一般的なネットワーク分離の詳細は、共有ナレッジ側のページで扱っています。このページはカメラ固有の判断に絞っています。

繰り返しになりますが、分離は他の系統への影響を限定する措置であり、カメラそのものを安全にするものではありません。分離と、機器側の更新・設定・アカウント管理は、別々に必要です。

次に進める先

確認する範囲に応じて進んでください。