共有ナレッジ最終確認日 2026-08-14

必要なPoE給電容量は、どう計算する?

結論

必要なPoE給電容量は、接続する機器ごとの最大必要電力を「台数 × 1台あたり」で積み上げ、その合計に、増設予定などの運用条件から決めた設計予備を足して見積もります。このとき、給電ポートの数、ポート単体で供給できる電力、スイッチ全体のPoE給電容量は、それぞれ別の条件として確認します。8ポートあることと、8台へ十分に給電できることは同じではありません。

ブランドや用途を前提にしない計算手順です。ページ後半の計算ツールは、入力値をそのまま足し引きする簡易比較であり、最終的な給電設計の可否を判定するものではありません。

1. ポート数と給電容量は別の条件

最もよくある行き違いがここです。ポート数は「何台つなげるか」、給電容量は「合計で何 W 供給できるか」を表します。

8 ポートの PoE スイッチであっても、PoE の総給電容量が 60W の製品と 130W の製品では、接続できる機器の構成が変わります。1 台あたり 25W を必要とする機器を 8 台つなぐ場合、必要な合計は 200W です。ポートは足りていても、給電容量が足りなければ動きません。

この関係は、給電する機器の種類によって変わりません。アクセスポイント、IPカメラ、IP電話機のいずれであっても、確認するのは「給電ポートの数」と「合計で供給できる電力」の 2 つです。

給電容量が不足した場合の挙動は機器によって異なります。優先度の低いポートへの給電が止まる、起動と停止を繰り返す、といった形で現れることがあります。ある動作条件のときだけ消費電力が上がり、そのときだけ症状が出る、というケースもあります。

計算ツールでは、ポート数の充足と給電容量の充足を、別々の判定として表示します。片方が満たされていても、もう片方が満たされているとは限らないためです。
PoE給電で独立して効く条件と、その条件が効く位置
  1. 給電側(PSE)PoEスイッチ
    • ポート単体の給電能力
    • 装置全体のPoE給電容量
    • 電力クラスによる割り当て
    いずれも給電側で別々に効く条件。ポート単体で足りても装置全体で足りるとは限らず、実際の割り当ては電力クラスの判別結果によって決まる。
  2. 経路ケーブル
    • ケーブルでの損失
    給電側と受電側は測定点が違い、その間にこの損失が入る。給電側の値から受電側の値をそのまま引き算はできない。
  3. 受電側(PD)PoEで給電する機器
    • 機器ごとの最大必要電力
    • 要求するPoE方式・電力クラス
    仕様書の値が受電側で受け取る電力か、給電側に要求する電力かを確認する。

この図は条件の位置関係だけを示しています。規格ごとの具体的な電力値は 「5. 給電側の値と受電側の値は測定点が違う」に出典付きで記載しています。 実際の設計値は、採用する機器の仕様書で確認してください。

2. 機器ごとの最大必要電力を確認する

計算に使うのは、平均消費電力ではなく最大消費電力です。

機器の消費電力は、常に一定とは限りません。次のような条件で増加することがあります。設計時には、これらが同時に発生した状態を想定します。

  • 照明や加熱を伴う機能の動作(IPカメラの赤外線照明、屋外機のヒーターなど)
  • 可動部の動作(旋回・ズームなど)
  • ファンなど、環境条件に応じて動く部分の動作
  • その機器に接続された外部機器への給電

機器の仕様書に記載された最大消費電力を、そのまま入力してください。カタログの「消費電力(標準)」だけを見て計算すると、条件が重なったときに不足します。

必要電力は、機器の種別や台数からは決まりません。同じ用途の機器でも機種ごとに異なるため、実際に採用する機種の仕様書から転記します。

3. 必要な PoE 方式は機器仕様から確認する

消費電力の W から、必要な IEEE 規格や電力クラスを逆算することはできません。

PoE には複数の世代があり、世代ごとに給電側が供給できる電力の範囲が定められています。ただし、ある機器が何 W を必要とするかという情報だけでは、その機器がどの方式・電力クラスでの給電を要求するかは決まりません。機器側が要求する条件は、仕様書に明記されています。

確認するのは「規格名が同じかどうか」ではなく、受電側(PD)が要求する条件を、給電側(PSE)が提供できるかどうかです。IEEE の PoE 世代には、電力クラスの判別や後方互換のための仕組みが定義されており、規格名が異なる組み合わせでも動作する場合があります。

  • 給電される機器(受電側 / PD)の仕様書に記載された、要求する PoE 方式と電力クラスを確認します。
  • スイッチ側(給電側 / PSE)の仕様書に記載された、対応する PoE 方式と、ポートに割り当て可能な電力を確認します。
  • 受電側が要求する PoE 方式・電力クラスと、給電側が提供できる方式・割当可能電力が互換条件を満たすかを確認します。規格名が完全に一致していること自体を必須条件にはしません。
  • 判断がつかない組み合わせは、メーカーが公開している対応条件、または実機での確認結果によって判断します。
計算ツールでは、必要な PoE 方式は入力欄として用意していますが、消費電力からの自動判定は行いません。入力された内容をそのまま表示するだけです。方式・クラスの互換性判定も行いません。

4. ポート単体の給電能力を確認する

スイッチ全体の給電容量が足りていても、1 ポートあたりの上限が足りなければ、消費電力の大きい機器は動きません。

例えば、全体で 370W 供給できるスイッチであっても、1 ポートあたりの上限が 30W であれば、55W を必要とする機器はそのポートでは動作しません。全体容量とポート単体能力は、独立した確認項目です。

旋回機構を持つカメラ、ヒーター付きの屋外機、外部機器への給電を伴う構成のように、1 台あたりの必要電力が大きい機器がある場合は、この項目が制約になることがあります。

5. 給電側の値と受電側の値は測定点が違う

「スイッチの給電容量」と「機器の最大消費電力」は、同じ地点で測った値とは限りません。単純に引き算できる前提で設計しないでください。

給電側と受電側は、値を測っている地点が違う(概念図)
  1. 測定点 A給電側(PSE)PoEスイッチ仕様書に書かれる PoE 給電容量給電側が供給できる能力として読む値
  2. 経路ケーブル
    • ケーブルでの損失
    • 電力クラスによる割り当ての条件
  3. 測定点 B受電側(PD)PoEで給電する機器仕様書に書かれる最大消費電力受電側が受け取る/消費する値であることがある

IEEE 802.3 が定めている、給電側と受電側の値

  • 802.3at給電側(PSE)は最大 30W を供給受電側(PD)が受け取るのは最大 25.5W
  • 802.3bt給電側(PSE)は最大 90W受電側(PD)は最大 71.3W

表の値は規格が給電側と受電側それぞれに定めているもので、この 2 つの差がケーブルでの損失量を表しているわけではありません。実際の設計値は、採用する機器の仕様書で確認してください。

スイッチの仕様書に書かれた PoE 給電容量は、給電側(PSE)が供給できる能力です。給電される機器の仕様書に書かれた最大消費電力は、受電側(PD)が受け取る/消費する値であることがあります。この 2 つの間には、ケーブルでの損失や、電力クラスによる割り当ての条件が入ります。

IEEE 802.3 で定められている給電条件では、給電側(PSE)と受電側(PD)で扱う電力値が異なります。Ethernet Alliance による IEEE 802.3 PoE の技術解説では、この差が具体的な数値として示されています。たとえば 802.3at では PSE 側が最大 30W を供給する一方、PD 側が受け取るのは最大 25.5W とされています。802.3bt では PSE 側が最大 90W、PD 側が最大 71.3W です。給電側の数値と受電側の数値をそのまま同じものとして扱うと、この差の分だけ見積りがずれます。

規定そのものは IEEE 802.3 が定めています。Ethernet Alliance は、その内容を解説している業界団体です。実際の設計値は、採用する機器の仕様書に記載された値で確認してください。

  • 受電側の機器の仕様書の値が、受電側(PD)で受け取る電力なのか、給電側に要求する電力なのかを確認します。
  • スイッチの PoE 総給電容量は、給電側(PSE)の能力として読みます。
  • 実際の割り当ては電力クラスの判別結果によって決まるため、仕様上の合計値どおりに使い切れるとは限りません。
  • 配線長・ケーブル種別による損失、周囲温度による制限、メーカーが指定する条件は、別途確認が必要です。
計算ツールは、入力された値をそのまま足し引きする簡易比較です。測定点の違い、電力クラスの割り当て、ケーブル損失、温度による制限は含んでいません。したがって、この比較で「充足」と出ても、最終的な給電設計が確定したことにはなりません。

6. 合計給電容量と設計予備

必要な合計電力を出したうえで、どれだけ余裕を持たせるかを決めます。

必要電力の合計は、機器ごとに「台数 × 1 台あたり最大必要電力」を計算し、それを足し合わせたものです。ここに、設計上の予備を加えたものが、スイッチに求める給電容量の目安になります。

予備を「20%」「30%」といった固定値で決める説明もありますが、適切な予備は将来の増設計画、機器の入れ替え予定、現場の温度条件によって変わります。計算ツールでは、予備を W の実数として自分で入力する形式にしています。
  • 増設予定がある場合:増設分の機器の最大消費電力を積み上げて予備とします。
  • 増設予定が未定の場合:どこまでを想定に含めるかを、判断として明示的に決めます。
  • 予備を取らない判断もありえます。その場合、増設時にスイッチごと入れ替える前提であることを記録しておきます。

7. この計算で扱えないこと

  • 給電側(PSE)と受電側(PD)の測定点の違いは補正していません。入力された値をそのまま比較します。
  • 電力クラスの判別と、それにもとづく割り当ての条件は含まれていません。
  • 配線長やケーブル種別による電力損失は、この計算に含まれていません。長距離区間がある場合は、別途確認が必要です。
  • 周囲温度による給電制限は含まれていません。高温環境に設置する場合、機器の仕様上の制限を確認してください。
  • スイッチ自体の消費電力・電源構成・冗長電源の要否は扱っていません。
  • メーカーが指定する固有の条件は反映されていません。
  • 実際の機器選定には、この計算結果に加えて、設置環境・保守条件・調達条件の確認が必要です。
このため、この計算で「充足」と表示されても、それは入力値どうしの単純比較を満たしたという意味にとどまります。実際に給電できるかどうかは、対象製品の仕様書・電力クラス・割り当て条件・設置環境をあわせて確認したうえで判断してください。

8. 入力値ベースの PoE 給電予算 簡易比較

機器ごとの最大必要電力を合計し、入力されたスイッチ側の条件と単純に比較します。ポート数・給電容量・ポート単体能力は、それぞれ独立した比較として表示します。これは給電設計の可否を確定するツールではありません。入力内容はこのブラウザの中だけで処理され、送信も保存もされません。

給電する機器(受電側 / PD)

機器の仕様書に記載された「最大消費電力」を入力してください。実測の平均値ではなく最大値を使うことで、ピーク時(夜間の赤外線照明点灯時、PTZ 動作時、ヒーター動作時など)の不足を避けやすくなります。

給電される機器の仕様書に書かれた最大消費電力は、受電側(PD)で受け取る値であることがあります。給電側(PSE)が供給する値とは測定点が異なる場合があるため、この比較の結果には両者の差が反映されていません。

機器の仕様書に書かれている値をそのまま転記してください。消費電力からの自動判定も、給電側との互換性判定も行いません。

スイッチ側の条件(給電側 / PSE・分かる範囲で)

スイッチの PoE 給電容量は、給電側(PSE)が供給できる能力です。実際にどれだけ割り当てられるかは電力クラスの判別結果によって決まり、仕様上の合計値どおりに使い切れるとは限りません。最終的な機器のサイジングは、対象製品の仕様書・PoE クラス・割り当て条件をあわせて確認してください。

将来増設や余裕分として確保したい電力を W で入力してください。20% / 30% といった既定値は用意していません。

候補スイッチの PoE 給電対応ポート数。

仕様書の PoE 総給電電力。ポート数とは別の値です。

1 ポートで供給できる最大電力。合計容量が足りていても、この値が足りなければ高消費電力の機器は動きません。

入力値ベースの簡易比較結果

入力された値をそのまま足し引きした比較です。給電設計の可否を確定するものではありません。

機器の台数と 1 台あたりの最大必要電力を入力すると、比較結果が表示されます。初期値は用意していません。