小規模オフィスのネットワークは、何から決めればいい?

小規模オフィスのネットワークは、在籍人数だけでは構成が決まりません。先に決めるのは、接続する端末の数と同時利用の状況、有線と無線それぞれに求める役割、業務で使うアプリケーションと回線の条件、分けたい通信の範囲、PoEで給電する機器の有無、そして誰がどこまで運用するかです。これらが揃ってはじめて、ルーター/ファイアウォール、スイッチのポート数、アクセスポイントの台数と配置が具体的に決まります。

ブランドを前提にしない設計手順です。表や図は構成を考えるための枠組みであり、そのまま発注できる構成表ではありません。

1. 人数だけでは構成が決まらない理由

「20人くらいのオフィス」という条件だけでは、必要な機器も台数も決まりません。同じ20人でも、ネットワークにかかる負荷と必要な機能が大きく変わるためです。

在籍20人のオフィスでも、1人がノートPC1台だけを使う職場と、PC・スマートフォン・タブレット・IP電話を1人で並行して使う職場では、接続端末数が3倍以上変わります。全員が同時に在席するのか、外出や在宅勤務で実際の同時利用は半分程度なのかによっても、必要な収容能力は変わります。

業務内容の影響も大きく出ます。文書作成とメールが中心の職場と、大容量ファイルを社外とやり取りする職場、常時ビデオ会議が動いている職場では、必要な回線と内部の帯域が変わります。ここに来客用の無線、防犯カメラ、複合機、決済端末が加わると、確認すべき項目はさらに増えます。

したがって、最初に決めるのは機器ではなく条件です。以下の項目を整理してから機器の話に進むと、後戻りが減ります。

  • 接続する端末の種類と数、そのうち同じ時間帯に実際に使われる数
  • 有線で接続するもの、無線で接続するもの、どちらでもよいものの区別
  • 業務で使うアプリケーションと、外部サービスへの依存度
  • インターネット回線の本数・種別と、拠点間接続の要否
  • 分けたい通信の範囲(来客用、業務用、カメラなど)
  • PoEで給電する機器の有無と、その消費電力
  • 将来の増員・レイアウト変更・拠点追加の見込み
  • 設定変更や障害時の一次対応を、社内・社外のどちらが行うか
この整理は一度で確定するものではありません。候補機器や現地の配線条件が具体化する過程で、前提に戻って調整することがあります。

2. 端末数と同時利用を数える

在籍人数ではなく、ネットワークに接続されるものを数えます。人が使わない機器も接続端末です。

オフィスでネットワークに接続されるものの例と、数える単位
区分具体例数え方の注意
業務用の個人端末ノートPC、デスクトップPC、業務用スマートフォン、タブレット1人1台とは限りません。貸与端末と個人所有端末の両方が接続される場合は合算します。
共用の業務機器複合機、ラベルプリンタ、スキャナ、会議室のディスプレイ機器使用していない時間帯もネットワークに接続したままになる場合があり、同時利用の有無とは別に収容の枠を確保します。
通信・音声機器IP電話機、会議室のマイク/スピーカー機器通話品質に影響するため、有線収容や優先制御の要否を個別に確認します。
店舗・受付系の機器POSレジ、決済端末、受付タブレット、電子錠の制御機器停止が業務に与える影響が大きい場合があるため、影響の範囲を確認したうえで、他の通信と分けるかどうかを決めます。
映像・センサー機器防犯カメラ、録画装置、入退室管理機器録画・配信の方式によって通信パターンが変わります。連続録画する構成では録画先への継続的な映像通信が発生し、イベント録画やエッジ録画では異なります。台数、1台あたりの通信量、実際に使用する方式を確認します。
来客・協力会社の端末打ち合わせ時の持ち込みPC・スマートフォン台数が読みにくいため、想定の上限を決めておきます。

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数え終えたら、そのうち「同じ時間帯に実際に通信しているもの」を見積もります。常時接続の機器と、人が操作しているときだけ通信する端末は分けて考えます。この同時利用数が、無線側の設計とインターネット回線の検討の入力になります。

同時利用数は、実測できるなら実測が確実です。既存環境がある場合、既存機器の管理画面や監視データで、時間帯ごとの接続数と通信量を確認できることがあります。

3. 有線と無線の役割分担を先に決める

「全部無線でよい」「全部有線にする」のどちらかに寄せるのではなく、機器ごとに向き不向きで振り分けます。

接続方式を選ぶときの判断材料
観点有線が向きやすい条件無線が向きやすい条件
設置場所席や設置位置が固定されている席が固定されていない、配線が引けない場所にある
通信の性質通信量が大きい、通信の途切れが業務に直結する通信量が中程度で、短時間の再接続が許容できる
機器の性質常時稼働する共用機器、給電も同じ配線で行いたい機器持ち運ぶ端末、有線ポートを持たない端末
運用接続先を物理的に固定したい席替えやレイアウト変更が頻繁にある

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一般的なオフィスLANでは、アクセスポイントを有線LANで収容し、PoEで給電する構成がよく使われます。一方、対応する機器では無線バックホールやメッシュ構成をとれる場合もあります。方式によって利用できる帯域、冗長性、給電の取り方、設置条件が変わるため、採用する構成にあわせて確認します。

複合機、録画装置、IP電話機、会議室の機器などは有線側に残ることがあります。有線ポート数の見積りは、席数ではなく、このように有線で収容する機器の数から行います。

4. ルーター / ファイアウォール

インターネットとの境界にあたる部分です。回線条件と、通したい/止めたい通信の方針から決めます。

  • 契約している回線の種別と本数。回線終端装置がどこまでの機能を持つかも確認します。
  • 拠点間接続や在宅勤務からの接続が必要かどうか。必要な場合、その方式と同時接続数。
  • 外部へ公開するサービスの有無。ある場合、その通信をどこで受けるか。
  • セグメントを分ける場合、セグメント間の通信をどこで制御するか。
  • 通信ログをどこまで残すか。保存期間と保存先。
  • 機器自体の障害時にどう復旧するか。予備機を持つか、交換までの停止を許容するか。

同時に扱えるセッション数や処理性能は機器ごとに異なります。カタログ上の数値は測定条件によって変わるため、比較する場合は測定条件をあわせて確認してください。

インターネット回線側の実効速度は、契約種別、時間帯、経路、接続方式によって変わります。特定の数値を前提にした構成を組む場合、その数値がどの条件で得られるものかを確認しておく必要があります。

5. スイッチとポート計画

ポート数は「席数」ではなく「有線で収容するものの数」に、アップリンクと将来分を足して考えます。

  1. 有線で収容する機器を数えます(PC、複合機、IP電話機、アクセスポイント、録画装置、カメラなど)。
  2. スイッチ同士やルーターへの接続に使うポート(アップリンク)を加えます。
  3. 空きポートをどれだけ残すかを決めます。増設予定があるなら、その分を実数で見込みます。
  4. 上記の合計から、必要なポート数と設置台数を決めます。

空きポートの割合を「何%」と一律に決めても、必要な空き数には結びつきません。1年以内に増員の予定があるなら、その端末数を実数で足すほうが確実です。増設予定がないなら空きを持たない判断もありえます。その場合、増設時にスイッチを追加または入れ替える前提であることを記録しておきます。

スイッチ選定時に、ポート数以外で確認する項目
確認項目確認する理由
管理機能の有無VLAN、ポート単位の制御、状態監視を行うには管理機能が必要です。後から必要になると機器の入れ替えが発生します。
PoE給電の可否と総給電容量ポート数と給電容量は別の条件です。給電する機器がある場合は個別に確認が必要です。
アップリンクの速度と本数端末側の合計通信量が集中する経路です。段数を重ねるほど上位側に負荷が集まります。
設置環境ラックの有無、動作音、放熱、電源の位置。執務室内に置く場合は動作音が問題になることがあります。
電源と障害時の扱い停電時にどの機器を維持するか。無停電電源装置の対象に含めるかを決めます。

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6. アクセスポイントの計画

AP台数は、面積だけでも人数だけでも決まりません。カバーしたい範囲と、同時接続端末数の両方から考えます。

無線の設計には、範囲を埋めるための考え方(カバレッジ)と、同時に接続する端末を収容するための考え方(キャパシティ)があります。この2つは別の条件で、どちらが制約になるかは職場によって変わります。広いが人が少ないフロアではカバレッジ側が、狭い会議室に人が集中する環境ではキャパシティ側が制約になりやすくなります。

実際の電波の届き方は、壁や什器の材質、天井の高さ、設置位置、使用する周波数帯、周囲の電波環境によって変わります。同じ機器でも建物が変われば結果が変わるため、面積を一定の数値で割って台数を出す方法には限界があります。

  • 無線を提供する範囲と、提供しない範囲を先に決めます。
  • 同じ時間帯に無線へ接続する端末数を見積もります。会議室・執務室・休憩スペースで偏りがあれば、場所ごとに分けて把握します。
  • アクセスポイントを設置できる位置と、そこまでの配線・給電の経路を確認します。
  • 既存の無線環境や近隣からの電波の影響を確認します。
  • 天井高、間仕切りの材質、什器の配置など、電波の届き方に影響する条件を記録します。

カバレッジ側とキャパシティ側それぞれの出発点を計算する手順と、入力値ベースの計算ツールは、AP台数の考え方をまとめたページに用意しています。

7. PoEで給電する機器

配線と同じケーブルで電力を供給する機器がある場合、スイッチ側の給電条件を別途確認します。

アクセスポイント、IPカメラ、IP電話機、一部の入退室管理機器は、LANケーブル経由で給電できる場合があります。給電を使うと機器の設置場所にコンセントが不要になりますが、その分スイッチ側に給電能力が必要になります。

  • 給電する機器ごとの最大必要電力を、機器の仕様書から確認します。カタログの標準値ではなく最大値を使います。
  • スイッチ全体の給電容量と、ポート単体で供給できる電力を、それぞれ別の条件として確認します。
  • 受電側が要求する給電方式・電力クラスを、給電側が提供できるかを確認します。
  • 配線経路の実際の長さを確認します。図面上の直線距離ではありません。
ポート数が足りていることと、そのポート数ぶんの給電ができることは別です。8ポートのPoE対応スイッチが、8台すべてに十分な電力を供給できるとは限りません。給電の詳細な確認手順は、PoEスイッチの選び方をまとめたページで扱っています。

8. 通信を分ける範囲を決める

来客用の無線、業務用のネットワーク、カメラや設備機器のネットワークを、どこまで分けるかを設計の早い段階で決めます。

分ける目的は、ある区画で起きたことが他の区画に及ぶ範囲を限定することです。来客の端末から社内の共有フォルダに到達できない状態にする、設備機器のネットワークを業務端末から直接触れないようにする、といった形で使います。

分け方には段階があります。SSIDを分けることと、ネットワークとして分離することは同じではありません。IEEE 802.1Q で規定されるVLANはネットワークを論理的に分ける仕組みですが、分けたあとの通信をどこまで許可するかは、L3の経路制御やファイアウォールの設定で決まります。

セグメントを分けること自体が、安全な状態を作るわけではありません。分離は影響範囲を限定する手段の一つであり、利用者の認証、機器の更新、端末側の対策、管理者権限の扱いといった他の対策を置き換えるものではありません。

分け方の具体的な設計と、SSID・VLAN・IPサブネット・通信制御の関係は、ゲスト用アクセスの分離をまとめたページで扱っています。

9. カメラ・IP電話・POS・複合機

PCとは性質の異なる機器です。ネットワークに求める条件が違うため、まとめて扱わずに個別に確認します。

機器種別ごとに、ネットワーク側で確認する条件
機器ネットワーク側で確認する条件
防犯カメラ・録画装置台数と1台あたりの通信量、録画装置までの経路の帯域、給電方式と消費電力、他の通信と分けるかどうか、遠隔から閲覧する場合の経路
IP電話機有線収容の可否、給電の要否、音声通信の優先制御が必要か、停電時にどこまで維持するか
POS・決済端末接続先のサービスと通信要件、業務停止の影響度、他の通信と分けるかどうか、回線障害時の代替手段
複合機・プリンタ有線/無線のどちらで接続するか、スキャンデータの送信先、外部から直接到達できない状態にするか
入退室管理・設備機器常時通信の有無、管理用の通信経路、業務ネットワークから分けるかどうか、停電時の動作

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これらの機器は、導入部門がIT部門と異なることがあります。設備工事の一環でカメラや電子錠が入る場合、ネットワーク側の要件が後から判明することがあるため、早い段階で情報を集めておくと構成変更を避けられます。

10. 回線と帯域

インターネット回線と、内部の経路の両方を確認します。どちらか一方だけを見ても足りません。

クラウドサービス中心の業務では、社外との通信がそのままインターネット回線を通ります。ビデオ会議、クラウドストレージ、SaaS、遠隔からのカメラ映像閲覧が同時に発生する時間帯を想定します。一方、ファイルサーバーや録画装置が社内にある場合、その通信は内部の経路を通ります。

  • 社外向けの通信と社内向けの通信を分けて見積もります。経路が異なるためです。
  • 上り方向と下り方向を分けて考えます。ビデオ会議やカメラの外部閲覧は上り方向を使います。
  • スイッチ間のアップリンクに、その先の全端末の通信が集まります。段数を重ねる構成では上位側から確認します。
  • 回線の実効速度は契約種別・時間帯・経路によって変わります。特定の数値を前提にする場合、その条件を確認します。
1人あたりに必要な帯域は、業務内容と利用するサービスによって大きく変わるため、一律の値は置けません。既存環境がある場合は、実際の利用状況を測ることが最も確実な入力になります。

11. 障害時と運用体制

構成を決める前に、止まったときに誰が何をするかを決めておきます。運用体制は機器選定にも影響します。

  • インターネット回線が使えなくなったとき、業務のどこが止まるかを整理します。クラウド中心の業務ほど影響が大きくなります。
  • 止められない業務がある場合、代替の通信手段を用意するか、その業務を社内で完結できる形にするかを決めます。
  • 機器が故障したときの復旧手段を決めます。予備機を持つか、交換までの停止時間を許容するか。
  • 設定変更を誰が行うかを決めます。社内で行う場合、管理画面の扱いやすさが選定条件になります。
  • 障害発生時の一次切り分けを誰が行うかを決めます。遠隔から状態を確認できる必要があるかどうかが変わります。
  • 停電時にどの機器を維持するかを決めます。無停電電源装置の対象範囲に影響します。

運用体制が決まると、管理機能の要否や、遠隔管理の必要性がはっきりします。現地に技術担当がいない拠点が増えるほど、この条件の重みが増します。

12. 規模が変わると、重くなる問いが変わる

規模が大きくなると、収容する端末、設置場所、管理の関係者が増えていく傾向があります。それにともなって、確認しておきたい問いも増えます。以下は「この段階で確認しておきたい問い」の整理であり、人数から構成や運用体制を決めるための表ではありません。人数は目安であって、判断の根拠そのものではありません。

規模の段階ごとに確認しておきたい問い(人数から機器台数や運用体制を決めるための表ではありません)
確認項目10人前後20人前後50人前後
端末密度端末の実数と同時利用を確認する会議室など局所的な集中がないか確認するフロア・場所ごとに端末密度を分けて確認する
有線ポート計画有線で収容する機器の数と設置位置を確認するスイッチを分散して置く必要があるか確認する配線経路と収容位置をどこまで設計するか確認する
AP設計カバレッジとキャパシティのどちらが制約になるか確認する場所ごとの偏りがあるか確認する設置位置とチャネル設計をどこまで詰めるか確認する
セグメント分割来客用を分けるかどうか確認する業務用・来客用・設備機器をどこまで分けるか確認する部門や業務単位で分ける必要があるか確認する
PoEPoEで給電する機器があるか確認するスイッチ全体の給電容量が足りるか確認する給電容量と電源構成をあわせて確認する
運用誰が設定変更・一次切り分けを担当するか確認する変更手順と障害時の連絡先が決まっているか確認する状態の可視化と変更履歴の管理が必要か確認する
拡張余地増設時に機器を入れ替える前提でよいか確認する1〜2年先の増員を実数で見込めるか確認する拠点追加やレイアウト変更を織り込むか確認する

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在籍人数から必要な機器の台数や運用体制を一律に決めることはできません。同じ人数でも、端末数、業務内容、建物条件、拠点の分かれ方によって必要な構成は変わります。各列は「その規模でこうなる」ではなく、「この段階で確認しておきたい問い」を示しています。左の列の問いは右の列でも引き続き必要です。

13. よく見落とされる項目

構成そのものより、前提の確認漏れが後から効いてくることが多い部分です。

  • 席数でポート数を見積もり、複合機・アクセスポイント・録画装置・IP電話機などの有線収容分を数え忘れる。
  • PoE対応スイッチのポート数だけを見て、給電容量を確認していない。
  • 無線の台数を面積だけで決め、会議室に人が集中する時間帯を見ていない。
  • 来客用のSSIDを分けたことで、社内ネットワークからも分離できていると考えてしまう。
  • 設備工事で入る機器(カメラ、電子錠、空調制御)のネットワーク要件を、後から知る。
  • 配線経路の実際の長さを測らず、図面上の直線距離で判断してしまう。
  • 停電時に維持したい機器を決めていないため、無停電電源装置の容量が後から足りなくなる。
  • 設定変更や障害対応を誰が行うかを決めないまま機器を選び、運用開始後に管理できなくなる。

14. 前提を見直すタイミング

一度整理した前提でも、次のような変化があれば見直しが必要になります。

  • レイアウト変更や増床で、無線を提供する範囲が変わったとき。
  • 在宅勤務や外出の比率が変わり、同時利用の実態が変わったとき。
  • 業務システムが社内設置からクラウドへ移ったとき(内部の通信が社外向けに変わります)。
  • ビデオ会議や大容量ファイルのやり取りが日常業務に入ったとき。
  • 防犯カメラ、電子錠、デジタルサイネージなど、継続的な通信が発生しうる機器が増えたとき。
  • 拠点が増え、拠点間の運用をまとめて行う必要が出てきたとき。

拠点が増える場合は、1拠点の構成をそのまま複製できるとは限りません。拠点ごとの回線条件、現地の対応体制、変更作業をどこから行うかが新しい判断軸になります。

15. 構成の概念図

典型的な構成要素の並びを図にすると次のようになります。すべてのオフィスにすべての要素が必要になるわけではありません。自社に不要な段は省略されます。

インターネットから端末までの構成要素の並びと、通信を分ける境界
  1. 外部との境界

    インターネット回線 / 回線終端装置
    • 契約種別と本数
    • 拠点間接続の要否
    ルーター / ファイアウォール
    • 外部との通信制御
    • セグメント間の通信制御
    • 通信ログ
  2. 境界: ここから内側が構内ネットワーク

    構内の集約

    スイッチ(有線の集約・PoE給電)
    • 有線機器の収容
    • アップリンク
    • PoE給電容量
    • VLANの割り当て
  3. 境界: 分けたいものはここでセグメントを分ける

    接続される機器(有線・無線)

    業務用セグメント
    • PC・複合機
    • 業務用SSIDの無線端末
    • IP電話機
    来客用セグメント
    • 来客用SSIDの端末
    • 社内資源への到達可否を制御
    設備・映像用セグメント
    • 防犯カメラ・録画装置
    • 入退室管理・設備機器

この図では、アクセスポイントをスイッチに有線で収容する一般的な構成を示しています。対応機器では無線バックホールやメッシュ構成をとる場合もあり、その場合は収容と給電の経路が変わります。図の境界は、通信を分ける位置の考え方を示すものです。実際にどこで何を制御するかは、機器構成と要件によって変わります。この図は特定の製品構成を示すものではありません。

16. 要件整理チェックリスト

機器の検討に入る前に、次の項目に答えられる状態を目指します。答えが出ていない項目があること自体は問題ではなく、どこが未確定かを把握しておくことが目的です。

利用者と端末

  • 在籍人数と、同じ時間帯に在席する人数
  • 接続する端末の種類と台数(人が使わない機器を含む)
  • 来客・協力会社の端末を接続させるか。させる場合の想定台数

業務とアプリケーション

  • 業務で常時使うサービスと、その通信が社内・社外のどちらに向かうか
  • ビデオ会議、大容量ファイル転送の頻度と同時実行数
  • 止まると業務が停止する通信はどれか

回線とWAN

  • 契約している回線の種別・本数と、変更予定の有無
  • 拠点間接続、在宅勤務からの接続の要否
  • 回線が使えないときに、どの業務をどこまで維持するか

構内の配線と設置

  • 有線で収容する機器の数と設置位置
  • 機器を設置できる場所(電源、放熱、施錠、動作音の許容)
  • 配線経路の実際の長さと、既存配線の再利用可否

無線

  • 無線を提供する範囲と、提供しない範囲
  • 場所ごとの同時接続端末数(会議室などの偏りを含む)
  • アクセスポイントを設置できる位置と、そこまでの配線・給電

分離とセキュリティ

  • 分けたい通信の範囲(来客用、業務用、設備・映像用など)
  • セグメント間で許可する通信と、遮断する通信
  • 通信ログの保存要否と保存期間

PoEと電源

  • PoEで給電する機器と、それぞれの最大必要電力
  • 停電時に維持する機器の範囲

運用と拡張

  • 設定変更を誰が行うか。障害時の一次切り分けを誰が行うか
  • 遠隔から状態を確認する必要があるか
  • 今後1〜2年の増員・レイアウト変更・拠点追加の見込み

このチェックリストは、構成を決めるための入力を揃えるためのものです。未確定の項目が多い段階では、確定している範囲で仮に構成を置き、確定に応じて見直す進め方になります。

次に進める先

どの条件から具体化するかによって、進む先が分かれます。