オフィスのアクセスポイントは何台必要?
オフィスのアクセスポイント台数は、床面積だけでは決まりません。無線を提供する範囲を埋めるために必要な台数(カバレッジ側)と、同じ時間帯に接続する端末を収容するために必要な台数(キャパシティ側)を別々に出し、大きいほうを一次計画の出発点にします。そのうえで、壁や什器による減衰、周囲の電波環境、チャネル設計、設置できる位置と配線・給電の制約を確認して、最終的な台数と配置を決めます。
ブランドを前提にしない計画手順です。ページ後半のツールは、入力された前提だけを使って一次計画の出発点を出すもので、RFサーベイや予測設計の代わりになるものではありません。
1. 面積だけでAP台数が決まらない理由
「何m²あたり1台」という考え方は目安として使われますが、それだけで台数を確定できる条件は限られています。
同じ200m²でも、間仕切りのない執務室と、個室が並ぶフロアでは電波の届き方が変わります。コンクリート壁、金属製のパーティション、書庫、什器の配置、天井の高さと形状はいずれも電波の減衰に影響します。同じ機器を同じ台数だけ設置しても、建物が変われば結果は変わります。
さらに、面積を埋められても端末を収容できるとは限りません。20席の執務室に1台のアクセスポイントで電波が届いていても、その20席に加えて隣接する会議室から30台が同時に接続すれば、通信品質は電波の強さとは別の理由で低下します。
面積からの見積り(カバレッジ側)と端末数からの見積り(キャパシティ側)は、分けて出します。そのうえで、両者を計算しても残る不確定要素を示します。
2. カバレッジ設計とキャパシティ設計は別のもの
無線の台数を考えるときの2つの入口です。どちらが制約になるかは環境によって変わります。
| 観点 | カバレッジ側 | キャパシティ側 |
|---|---|---|
| 解こうとしている問題 | 必要な範囲に十分な強さの電波が届いているか | 同時に接続する端末に必要な通信品質を提供できるか |
| 主な入力 | 無線を提供する範囲、建物構造、設置位置、使用する周波数帯 | 同時接続端末数、業務で使うアプリケーション、必要なスループット |
| 不足したときの症状 | 特定の場所でつながらない、電波が弱い、切れやすい | 電波は強いのに遅い、混雑する時間帯だけ品質が落ちる |
| 制約になりやすい環境 | 広いが人が少ないフロア、倉庫、区画が分かれた建物 | 会議室、研修室、人が集中する執務エリア |
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両方を計算すると、多くの場合どちらか一方が大きくなります。大きいほうを一次計画の出発点にしますが、これは「その台数で確定」という意味ではありません。台数を増やす場合は、電波が重なりすぎない配置とチャネル設計が別途必要になります。単純に台数を増やすだけでは、機器同士が干渉して品質が下がることがあります。
3. カバレッジ側で確認すること
1台あたりのカバー面積をどう置くかが、この側の結果をほぼ決めます。
- 無線を提供する範囲と、提供しない範囲を先に決めます。倉庫の未使用区画、機械室、屋外の一部を含めるかどうかで面積が変わります。
- 間取りを確認します。同じ面積でも、開けた空間と細かく仕切られた空間では必要な台数が変わります。
- 壁や間仕切りの材質を確認します。コンクリート、金属、ガラス、石膏ボードでは電波の通り方が異なります。実際の減衰量は建材と厚みによって変わるため、共通の数値では置けません。
- 天井の高さと構造、設置可能な高さを確認します。設置位置が低いと、什器や人体の影響を受けやすくなります。
- 使用する周波数帯を確認します。周波数帯によって届き方と障害物の影響の受け方が変わります。
- 複数フロアがある場合、フロアごとに分けて確認します。上下階への電波の回り込みは、条件によって助けにも干渉にもなります。
1台あたりのカバー面積を置く根拠としては、採用候補の機器の資料、同種の建物での過去の実測値、事前の電波調査の結果があります。根拠のない数値を置いた場合、その不確かさはそのまま台数に伝わります。
4. キャパシティ側で確認すること
在籍人数ではなく、同じ時間帯に実際に無線へ接続する端末の数を使います。
- 1人が使う無線端末の数を確認します。ノートPCとスマートフォンを併用する職場では、人数の2倍以上になることがあります。
- 在席率を確認します。外出や在宅勤務がある職場では、在籍人数と同時利用数が一致しません。
- 場所ごとの偏りを確認します。会議室や研修室に人が集中する時間帯は、その場所だけ別に見積もります。
- 業務で使うアプリケーションを確認します。ビデオ会議、大容量ファイルの同期、映像の閲覧では、必要な通信量が大きく変わります。
- 端末の世代構成を確認します。古い世代の端末が混在すると、同じ電波の中で使われる時間の配分が変わります。
- 来客・協力会社の端末を接続させる場合、その想定台数も加えます。
1台のアクセスポイントに収容すると想定する端末数は、機器の仕様上の「最大接続数」とは別の値です。仕様上の最大値は接続できる上限であり、その台数で必要な通信品質を保てることを示すものではありません。想定値は、必要なスループットと業務内容から置きます。
5. 電波環境と干渉
無線は共有された媒体を使うため、自社の機器だけでは条件が決まりません。
同じ、または重なるチャネルを使う機器の電波が互いに影響する環境では、通信機会の競合や干渉が起こり、利用できる通信時間や品質に影響することがあります。テナントビルでは、隣接する他社の無線環境の影響を受けることがあります。自社で設置した機器同士でも、電波の重なり方によっては同じことが起こります。
- 周囲でどの周波数帯がどの程度使われているかを確認します。既存環境がある場合は実測が確実です。
- 無線LAN以外の機器の影響を確認します。周波数帯によっては、他用途の機器と帯域を共有します。
- 台数を増やすときは、電波が重なる範囲とチャネルの割り当てをあわせて検討します。
- 設置後も電波環境は変わります。隣接テナントの入れ替えやレイアウト変更で条件が変わることがあります。
無線LANが使用できる周波数帯や送信電力の条件は、国ごとの制度によって定められています。日本国内で使用する無線機器については、電波法の技術基準に適合していることを証明する制度(技術基準適合証明・工事設計認証)があり、無線LANやWi-Fiルーターもその対象機器に含まれます。国内で使用する無線機器については、対象機器ごとに日本の無線設備に関する適合状況を確認します。個別の機器が証明を受けているかどうかは、総務省の電波利用ポータルにある検索で確認できます。
6. 設置位置・配線・給電の制約
計算上の台数が設置できるとは限りません。設置位置の制約は、設計の早い段階で確認します。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 設置可能な位置 | 天井の構造、意匠上の制約、賃貸物件での施工可否によって、置きたい位置に置けないことがあります。 |
| 配線経路と実配線長 | 天井裏や壁内の迂回を含めた実際の長さで確認します。図面上の直線距離ではありません。 |
| 給電方式 | PoEで給電する場合、スイッチ側の総給電容量とポート単体の給電能力を別々に確認します。 |
| アップリンクの帯域 | アクセスポイントを収容するスイッチから先の経路に、全端末の通信が集まります。 |
| 設置後の保守 | 高所や天井裏に設置する場合、機器の交換や再起動にかかる手間が変わります。 |
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設置できる位置が限られる場合、計算で出た台数をそのまま配置できないことがあります。その場合は、置ける位置での効果を優先して配置を組み直すことになります。台数だけを合わせても、配置が適切でなければ意図した結果になりません。
7. 一次計画の次に行うこと
計算で出した台数は出発点です。そこから先は、実際の条件を確認する工程になります。
- 一次計画の台数をもとに、設置候補位置を図面上に置きます。
- 設置位置ごとに、配線経路と給電の可否を確認します。
- 現地で電波環境を確認します。既存環境がある場合は実測、新規の場合は事前調査や予測設計を検討します。
- 候補機器の仕様と、置いた前提(カバー面積・収容端末数)が整合しているかを確認します。
- チャネルと送信出力の設計を行います。台数を増やした場合は特に必要になります。
- 運用開始後に実際の接続数と通信量を確認し、必要に応じて配置や設定を調整します。
規模や要件によっては、事前の電波調査や予測設計を行ったほうが確実な場合があります。どこまで行うかは、対象範囲の広さ、業務への影響度、やり直しのコストによって判断します。
8. この計算で扱えないこと
ページ後半のツールは、入力された2組の前提を割り算して切り上げるだけのものです。以下は計算に含まれていません。
- 壁・間仕切り・什器による電波の減衰。建材と厚みによって変わるため、共通の数値では置けません。
- 周囲の電波環境と干渉。既存環境の監視データ、予測設計、現地測定などで別途確認します。
- アクセスポイント側の無線構成と、接続する端末側の対応状況。
- チャネル設計と送信出力の設計。台数を増やすほど重要になります。
- 端末の世代構成の混在による影響。
- 設置可能な位置と、そこまでの配線・給電の制約。
- 上下階への電波の回り込み。条件によって助けにも干渉にもなります。
- ローミング(移動しながら接続を維持する)の要件。
9. 2つの入口から一次計画までの流れ
面積からの見積りと端末数からの見積りは、別々に出してから合流させます。
入力する前提(いずれも利用者が置く値)
カバレッジ側の前提- 無線を提供する範囲の面積
- 1台あたり想定カバー面積
キャパシティ側の前提- 同時接続端末数
- 1台あたり想定収容端末数
それぞれの計算(割り算して切り上げ)
カバレッジ側の台数- 面積 ÷ 1台あたり想定カバー面積
キャパシティ側の台数- 同時接続端末数 ÷ 1台あたり想定収容端末数
合流
一次計画の出発点 = 大きいほう- どちらが制約になっているかを確認する
- 境界: ここまでが計算、ここから先は現地の確認
ここから先は現地条件の確認
配置と設置条件- 設置可能な位置
- 配線経路と実配線長
- 給電
電波環境- 減衰
- 干渉
- チャネルと送信出力の設計
運用開始後- 実際の接続数と通信量の確認
- 配置・設定の調整
計算で出るのは図の3段目までです。4段目は計算では代替できません。この図は工程の並びを示すもので、各工程を誰が実施するかを示すものではありません。
10. AP一次計画ツール
カバレッジ側とキャパシティ側の出発点を、入力された前提だけで計算します。1台あたりのカバー面積や収容端末数といった既定値は持っていません。これは検討初期の一次計画のためのもので、RFサーベイ・予測設計・最終的な設置台数を置き換えるものではありません。入力内容はこのブラウザの中だけで処理され、送信も保存もされません。
カバレッジ側の前提(面積から考える)
対象エリアの面積と、1 台の AP でどの程度の面積をカバーすると想定するかを入力します。1 台あたりの カバー面積は、建物の構造、間仕切りの材質、設置高さ、使用する周波数帯、 必要な通信品質によって大きく変わります。このツールは既定値を持ちません。
実際に無線を使う範囲の面積です。倉庫の未使用区画や機械室など、無線を提供しない範囲は含めません。
採用候補の機器の資料、過去の実測値、事前調査の結果など、根拠のある値を入力してください。
キャパシティ側の前提(同時接続端末数から考える)
同時に接続する端末数と、1 台の AP にどの程度収容すると想定するかを入力します。1 台あたりの収容数は、 端末の世代、利用するアプリケーション、必要なスループットによって変わります。
在籍人数ではなく、同じ時間帯に実際に無線へ接続する端末の数です。1 人が複数台を使う場合は合算します。
接続可能な最大数ではなく、必要な通信品質を保てる想定値を台数(整数)で入力してください。
フロア数(任意)
上の面積・端末数は 1 フロアあたりの値として扱います。フロア数を入力すると、同じ条件のフロアがその枚数あるものとして 単純に掛け算した参考値を表示します。フロアごとに間取り・用途・端末数が異なる場合、この積算は実態と合いません。 その場合はフロア単位で入力し直してください。上下階の電波の回り込みも計算には含まれていません。
未入力の場合は 1 フロアとして計算します。
入力値ベースの一次計画結果
入力された前提だけを使った計算です。最終的な設置台数を決めるものではありません。
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